園田さんのご本の打ち合わせにうかがったある日、
「兄です」と紹介していただいたのが、吉原健一さんです。

統計学の権威の大学教授でいらした吉原さん。

それまでに、なんと15巻にもわたる英語の専門書を出版されていたり
先生としての生活についての著書を書かれていたり、
すでに出版経験のある方でした。

「これ、売れますかねえ?」と、分厚い原稿を手渡されました。

その場で少しだけ読ませていただいたところ、
難しい統計学のお話しではなく、人生をまとめられた自叙伝でした。

文章がとてもわかりやすく、しかもおもしろく、
数学のご専門の方なのに、文才もあってすごいなあーと感心しました。

おもしろいからといって「売れるか」というと、
正直、著名人でないと難しかったりします。

ですので、そのようにご説明して、なるべく費用をかけずに
自費出版をする方向で、進めることになりました。

ほとんど手を入れなくても読みやすい原稿なので、
装丁もシンプルにして、費用を抑えて出版することができました。

原稿の中に、お義父様の記された戦時中の生々しい記録があり、
「これをどうしても世に出しておきたい」というのが
出版の強い動機でもありました。
そうしてできたのが
「風の中の蝶にもにて~一統計屋のトラジェクトリィ」です。
妹さんの園田さんとお兄様の吉原さんのお二人の本が完成したあとに
吉原さんのお宅にお招きいただき、バーベキューでお祝いしました。

そのあとしばらくたって、吉原さんは他界されたのですが
この本を出版したい、という思いを果たすお手伝いをさせていただけて
よかったなあ、と思いました。