出版事業

企業におけるイノベーションと技術経営の実践イメージ

企業におけるイノベーションと技術経営の実践 ~日立で推進した研究開発と事業化~第2版

三木一克
¥1320 単行本

内容紹介

筆者は、入社後約30年間、日立の研究開発部門に所属し、電力・電機開発研究所および機械研究所の所長を務めた後、 東証一部上場の関連会社で9年間、工場長、社長として事業に携わった。研究開発を推進する立場とその成果を製品・事業につなげる立場を経験した。本書は、この経験をもとに研究開発を新製品・新事業につなげるまでの、研究開発現場でのある意味“闘い”について述べるとともに、開発強化を目指した組織経営の立場からの具体的な施策について述べるものである。
第二版では、本文と図表を追加し新たな内容を加えるとともに、大学での講義後の質疑応答の抜粋を付録に追加し本書の内容を補足した。

 

第一版の書評より

◆<書評子>「 技術者が誇りをもてる日立という会社」

知人より本書を薦められ、領域は異なるもののR&Dに携わってきた者として、早速、興味を持って目を通してみた。

結果、大きく2つのことが、強く印象に残った。

1つは、著者の、「研究開発(R&D)」と、その対象たる「技術」、そして、その主体である「人」に対する本質的な理解と並々ならぬ誠実さである。
筆者自身、髙い完成度を持った技術者であり、技術経営者であり、誰もが望む理想的な技術者人生を歩んできたことがうかがわれる。
一般的にこのような人生を歩んできた人たちは、色んな成果を自分が成し遂げたと言いがちであるが、筆者は、アイデアを生み出したり、新しい境地を開いた人達に、たとえ部下であってもその功績を認め、深い敬意を払っている。
それに、社内の人間だけではなく、学ぶべき人が外にいるなら、どんな立場であれ、積極的にその人の力を借りようとし、しかもその力を活かしてきっちりと成果に結び付けている。その人たちへの敬意も忘れない。
同時に人そのものと同じウェイトで、組織、チームの力の重要性も認識した上で、それらをR&Dマネジメントの中心に置いている。

印象のもう1つは、その技術者を育て、活かしてきた日立という会社の背骨の堅牢さである。
筆者が本書の終わりに述べている、日立に入った時に植え付けられたという日立の「技術観」、「技術者観」が、まさに本書で筆者が伝えようとしてきたことである。
日立という会社が、このような技術者の集団であるということであれば、何と頼もしいことであろうか。
「ものづくり」力の衰えを言われている昨今の我が国の製造メーカに上記のような「文化」がまだ根付いているならば、この先さほど心配することでもないのではないか。

書物としては、筆者の仕事の履歴に沿った、時系列的な記述ではないので、若干、読み惑うところはあるが、本書の目的が、筆者の技術観、技術者観、そして技術経営観を後輩に伝えたいということであるから、時系列的でないことは問題ではないだろう。

また、本書は、日立の技術者群像を描いた開拓史とも言えることから、これから研究者、技術者の道を歩まれる、あるいは道半ばにある人たちにとって、生き方・考え方の基本を学ぶという点において、たいへん有益、かつ期待に沿うものに違いない。

 

◆<しろうさぎ>「技術経営の実践書」

大学での講義資料をベースに書かれたためか、当時としては非常に高度な最先端の技術開発とその製品化、経営者としてどのようなアプローチが必要だったかについて具体的かつ平易に記載されており、MOTとくに技術経営の教科書として最適かつ貴重である。この本が、技術系への就職を目指す人には日立のような大企業の技術開発、製品開発がどのようなシナリオで取り組まれているかを知り、大学で身に着けるべき知識の幅を広げ深さを極める必要性を認識するためのきっかけを与えてくれるに違いない。

 

◆<チャレンジャー>「爽やか」

本のタイトルの「イノベーション」、「技術経営」というキーワードに惹かれ読んでみた。著者は日本を代表する製造業の原子力関連技術の研究者、研究所の所長、関連会社の社長というキャリアの持ち主で、それぞれの立場で、技術の本質を追い求める真面目な姿と、常に社会貢献を意識する姿が印象的だ。本を読み終え、勇気付けられ感動を覚えた後に、何故か暖かい気持ちになれた。それは、仕事の仲間や部下に敬意を払う著者の姿勢が本を通して伝わってきたからにほかならない。こんな上司の下で一度仕事をしてみたかったという思いが頭をよぎった。会社の経営者は勿論、これから製造業に就職しようと思っている学生諸君にも是非一読して欲しい。
小さな会社を経営し、様々な困難に直面してきた自分にとっても、始めた頃にこの本が出ていたら、もっと自信を持って経営できたのにと思わずにいられない。著者の志に勇気をいただいた。

著者について

三木一克

工学博士
国立研究開発法人 科学技術振興機構 研究成果最適展開支援プログラム第2分野アドバイザー
公益財団法人 電気科学技術奨励会 理事
技術経営士の会 顧問

書籍の情報

単行本 132ページ
発行 2020年6月6日
ISBN 978-4-908520-39-6
サイズ A5